健康Q&A:くも膜下出血

【Q】先輩がくも膜下出血で倒れ、手術をしました。まだ30代前半なのに…。くも膜
下出血の病状と予防法があれば教えてください。

【A】
 脳の主要な血管は,脳内とその表面にあるくも膜と呼ばれる薄い膜の間を走行して
います。脳内出血もくも膜下出血も一般に脳出血と呼びますが,くも膜下出血は,血
液が脳とくも膜との間のすきま(くも膜下腔)に急激に広がる出血です。脳内の主要な
血管に発生したこぶ(脳動脈瘤)が破裂して出血するのが,原因の約8割です。脳動脈
瘤ができる原因は不明ですが,先天的なものに,高血圧や動脈硬化などが加わって発
生すると考えられています。その他には,血管奇形(脳動静脈奇形)からの出血もあり
ます。日本人の発生率は高く,年間発生頻度は,人口10万人当たり約6〜16人で,女
性は男性の2.3倍といわれており,40〜50歳台に最も多く発生します。発症すると約4
割は死亡し,治療がうまくいって助かっても重大な後遺症が残るのは約3割で,社会
復帰できるのは約3割だけです。
 典型的な症状は,今まで経験したことのない激烈な頭痛が突然起こることで,しば
しば嘔吐を伴います。重症の場合には,手足の運動障害,意識障害も加わります。し
かし,症状の程度ははじめの出血量と関連しており,いきなり大出血をきたすと突然
死あるいは昏睡状態となり,少量の出血だと軽い頭痛だけで,風邪と間違われること
もあります。いずれにしても,早急に脳神経外科での診断,治療が必要です。なお,
小さな脳動脈瘤は,ほとんどのものが無症状で,裂けて出血して始めて症状が出現し
ます。脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血の治療は,再出血を防ぐことで,外科的手
術(クリッピング術)やコイル塞栓術を行います。再出血は,初回出血から24時間後,
あるいは1〜2週間後といった早期に発生することが多く,初回出血時は軽症でも,再
出血を来すと死亡率は高くなり,命が助かっても重大な後遺症を残す場合も多くなり
ます。
 くも膜下出血の発症自体を予知することはできませんが,危険因子を是正すること
によって発症の危険率を低下させることはできます。予防するためには,危険因子を
正しく理解し,治療できうるものは治療しておくことが重要です。自分でコントロー
ルできる危険因子は,高血圧,高脂血症,肥満,喫煙,過度の飲酒などで,特にくも
膜下出血の危険性は,アルコール摂取量に比例して増加します。

                         (2002年12月 〆谷 直人)